中国史が流行って欲しい―1―

こんにちは。「水滸伝」が流行って欲しいと思っているSです。
中国史がもっと日本で流行って欲しいので、「三国志演義」の次に有名な「水滸伝」の人気に火が付いて中国古代史以外の時代や文化に派生させたいって思っています。

「水滸伝」は中国の宋王朝を舞台にした物語です。中国では昔から「少不看水滸、老不看三国」(若者は「水滸伝」を読むべからず、年寄りは「三国志」を読むべからず)と言われています。若い人が「水滸伝」を読むと血気盛んになり、年配の方が「三国志演義」を読むと老練になるからです。まさに「水滸伝」の魅力を一言で表しきった見事な言い回しです。「水滸伝」の魅力としてよく語られるのが庶民にスポットを当てた物語ということです。「三国志演義」は劉備、曹操、諸葛亮、関羽など、まさに英雄たちを登場人物とした物語であり,読んでいてとてもワクワクします。ただ、彼らはあくまで英雄や豪傑であって,「三国志演義」を読んでもかれらの悩みや苦悩、葛藤には共感ができないと思います。自分を英雄や豪傑だと思っている人は別ですが。普通に生きていて、私の力で日本を世界一の経済大国にするぞ、なんて人はなかなかいないですよね。それに対して,「水滸伝」の登場人物は役人、塾の教師、漁師、無職の人など,あくまで一般の人々です。梁山泊の初代首領の王倫なんて元浪人生(科挙の落第生)です。だから、かれらの悩みには読者の僕たちにも共感できる部分が多く、そのため、登場人物の気持ちになることができるのです。その悩みの解決法にはたぶん共感できない部分が多いとは思いますが。あと、個人的に「水滸伝」の魅力だと思っているのがあだ名のカッコよさです。梁山泊の好漢たちはもちろん、超モブキャラの牛二のあだ名は没毛大虫です。このキャラはたんなる町のごろつきで、青面獣の楊志の物語で一瞬だけでてきます。ちなみに、この楊志は花石綱の運搬に失敗し、責任追及を恐れて、官職を捨てて逐電した人物です。みなさんも仕事や飲み会で失敗して逃げ出したくなることはありませんか。そういう経験のある人は楊志の気持ちがよくわかると思います。ただ、本当に逃げ出すのはどうかと思いますが。これは個人的な意見ですが、音の響き的に好きなあだ名は托塔天王(たくとうてんのう)の晁蓋(ちょうがい)です。ところで、「水滸伝」は当時の庶民の希望を取り入れまくった作品でもあります。これは「水滸伝」が都市部で流行した講談によって成立したことによるものです。だから、「水滸伝」の登場人物の中にはそれほど身分が高くなかったり、働いていなかったりする割には妙にお金を持っていてたくさん飲み食いする場面が多々見られます。まぁ、楊志みたいにお金がなくて先祖伝来の家宝を売りに出そうとする人もいますが。「水滸伝」の好漢達の金遣いが荒いのは,「『水滸伝』を読むー梁山泊の好漢たち」(伊原弘 著、講談社現代新書)によると、当時の庶民の希望を取り入れたものではないか、とのことです。つまり、視聴者のニーズを取り入れた結果の情景ということですね。また、「水滸伝」には、唐代からすでに庶民の人気だった「三国志演義」の要素も多分に取り入れています。小温侯の呂方や病関索の楊雄など、あだ名が「三国志演義」にゆかりのある人物が登場します。また、関羽と張飛になぞらえた大刀の関勝や豹子頭の林冲などの人物もいます。これは「三国志演義」好きにはポイントの高い点ではないでしょうか。

ここまで、「水滸伝」の登場人物の魅力についてごくごく簡単に書きました。本当はもっといっぱい書きたいことはありますが,今回はこの辺にしておきます。ここまで読んで,「水滸伝」に興味を持った方は是非見てみてください。本(岩波文庫)とドラマ(「水滸伝 All Men Are Brothers」)の両方があるので,どちらから入ってもいいと思います。今後,「水滸伝」の舞台となっている宋王朝や中国史の他の時代も伝えさせていただけたらなと思っております。次は「隋唐演義 〜集いし46人の英雄と滅びゆく帝国〜」を手ががりとして隋唐時代について語りたいなぁって,今のところ思っています。その際は,温かい気持ちで読んでやってください。

投稿日時:2022年09月16日 14時54分27秒
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